10月28日

階段から落ちた

 

バイト先の中にあるハシゴみたいに急な階段のほぼ1番上から、慣れないブーツを履いていたから滑って、まず膝で全体重を受け止めて、それからは長かった

死ぬかもなって思って叫んでるうちに左肩と頭から着地した、着地?目の前が真っ暗になった

でも意識もはっきりしてて、こうやって落ちたここが痛い全く動けない立てないと説明した

 

すぐには呼んでくれなかったけど救急車が来て病院に行った

 

真夜中の病院には、生きているのに生きていられない人がたくさんいて悲しかった

「死のうと思った」って細い声で言っている人も、どうして自分がここにいるのかわかってない人も、みんな生きているのに死んでいた

 

もう少し静かなところに行こっかって移動させられてレントゲンとかCTとか撮って、親が迎えに来るまで店長がずっと一緒にいてくれて

店長と一緒に病院を出て早朝に吸った煙草は美味しかった

 

 

 

 

その日はバイトのみんなで集まってパーティーをしていた

夜中にみんなで集まるのとか絶対楽しいだろうなって、好きな同僚たちと過ごすのは楽しいだろうなって待ち遠しかった

 

あたしは真面目すぎる

そのパーティー開催のお知らせに、参加費はありませんがお菓子や飲み物を持ち寄りましょうって書いてあったのに、ポテトチップスを持ってきたのは40人の中でわたしだけだった

 

その時点で、やっぱり、もしかしたらあたしは、違うなって、ちょっと気づいた

 

 

で、そんなこと考えてるうちに、わたしだけ空中に浮いていた

ゆっくり話してみたかった人がすぐそこにいるのにわたしからは後頭部しか見えてなかった、振り向かせることはひとりとしてできなかった

 

朝4時ごろ、パーティーが終わって、それぞれのグループで順番に消えていった

始発を待つ人だけが少し残っていたけど、そこにも入れなかった

唯一信頼してる子が、その子もわたしと同じ真面目で素敵な子で、片付けをしていた

わたしも手伝った、それで時間が過ぎるのを誤魔化そうと思って

必要なものを倉庫に取りにいって、そこで、落ちた

 

泣けなかった

痛かったし、死んだと思ったけど、なんでこんなタイミングでって情けなかったけど泣けなかった

 

ポテトチップスの袋が開けられることは、最後までなかった

 

 

 

10月29日

検査をたくさんした

レントゲンとかの結果だと骨が折れたりヒビが入ったり異常はなかったみたい

もう少し検査が必要だとMRI検査を受けた

ピアスを全部外すように言われて、ラブレットだけが生き残った

耳のピアスは外したたった20分のあいだに全て塞がった

 

階段から落ちたときに脱臼をして、すぐはまったらしい、だから炎症は起こってるし体内に血も溜まってるけどいまはなんともないと

3週間は安静にするよう言われた

 

薄々気づいていた、わたしは体が異常に強い、丈夫だ

大きい怪我もしたことないし、すぐに治る

落ちた階段の高さを思い出してみる、普通だったら身体中の骨折れるだろ、ていうか頭も打ってんだから死ぬだろあの高さ、どうなってるんだ、みんなにもあの高さを見てほしい

 

体が強いぶん、心が弱いんだな〜と実感した

 

夜、たっくさん泣いた

 

 

10月31日

ずっとこのまま外には出られない気がする

人と話すことも、会うことも、実は好きだ、それはわかってる

でもいまは、あの空中に浮いていた日を最後に世界から消えてしまったから、みんなが怖い、次に会うときどんな顔で会えばいいんだろう

 

 

もう何十回目かのお気に入りの映画をずっと見ている、セリフも言えるくらい、この映画の中に吸い込まれたら、この街に住めたらどんなに

 

階段から落ちているとき、ほんっっっっっっっっっっっっっっっっっっっとに死にたくない!と思った

毎日一回は死にたいと思ってしまってるのに、死ねないと思った

実際は死にたいなんて1ミリも思ってなかった、それでも言ってしまう、癖かな

 

人生どん底のタイミングで死んでもおかしくないような高さから落ちて、でもなんか死ななかったから、たぶん絶対生きてなきゃいけないようないいことがこれからあるんだろうなって思って、耐えてる

 

幸せになれるかなあ

 

人との距離はどうやって近くできるんだろう

 

外で小学生が狂ったようにトリックオアトリートを叫んでる、そんな街じゃないよ、ここは